先日開催された治部れんげさん講演会。
共に歩む未来のために〜男性研究者・学生のための共同参画〜
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/event/gender/jibu.html【追記】
当日講演会にご参加くださいました、
@ichinosekiさん、
@kobeniさんが素晴らしいレポートをアップしてくださいました。また、治部さんご本人による補足もブログにお書きくださいました。合わせてご覧いただけますと幸いです。
@ichinosekiさんによるレポート。
フェアな人ほど大変?〜治部れんげさん 講演会 :外資系IT企業につとめる男性社員の育休日記!@kobeniさんによるレポート。
イクメンを目指す男子向けの講演@東大に行ってきたよ 〜治部れんげさん「男性のワークライフバランス」〜 :kobeniの日記治部れんげさん(
@rengejibu)による裏話。
東大で男性のワーク・ライフ・バランスについてお話しました :RengeJibuの日記【追記ここまで】
平日夕方にも関わらず学内外から60名近くの方にご参加頂いて、盛況のうちに終えることができました。
いらしてくださった皆さま、どうもありがとうございました。
治部さんのご講演は、スライドの内容もトークも素晴らしく、こうした事後のテキストではなかなか微妙なニュアンスや臨場感はお伝えできませんが、私が印象に残ってメモした言葉から以下に少しご紹介させていただきます。
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タイトルは、
男性のワーク・ライフ・バランス
〜「フェアな人ほど大変」なのはなぜか〜
仕事と生活のバランスに満足?
→未婚男性は不満を感じている人が多い。
→男性の方が希望と現実のギャップが大きい
配偶者の勤め先は従業員のワークライフバランス(WLB)に配慮しているか?
→妻の勤め先は配慮している、と答える男性は多いが、夫の勤め先は配慮している、と答える女性は少ない。
→男性のWLBは配慮されていない。
→米国でも同様の傾向あり(米国男性についての調査:IBMが助成←米では企業の関心高い)。
男性がWLBに悩む例(日本:以下の例すべて大企業、くるみんマーク取得企業も)
→共働きで育児休業を取得した男性、取引先に挨拶もさせてもらえず、復帰後左遷。
→妻の体調不良で残業を減らした男性、評価に響き出世ルートから外される。外資に転職したら、仕事は厳しいがWLBは改善。能力主義。パフォーマンスを出せば家族優先は問題なくできる。
→子供が病気で休もうとしたら「奥さんは何してるの?」(←仕事してる)。
「男性には家庭責任がない、私生活がないという思い込み」
WLBはなにも家庭生活や子育てだけの話ではない。
→元スイス銀行トレーダー、現在は国際機関の日本代表で年間200本の講演をこなす60代男性。既婚子供なし。超多忙の中体調を崩す。
→「WLBって、まさに今僕が求めていることだよ」
→彼にとってのライフ=スポーツ。冬は講演を減らしてスキーに。健康、スポーツと仕事とのバランス。
夫婦ともにキャリア志向の場合。
いわゆる"Two bodies problem"勤務地が離れた夫婦。
→解決方法の例(日本):外資系管理職妻・米国に転勤、大学教授の夫は、在外研究制度を利用してついていく。
→portableな仕事を持つという強み。
遠距離結婚への対処(米)
→compressed work:勤務日を少なくしてその分長く働く。週4日みっちり働いて、3日は遠方の家族のもとへ。
(夏にコマツが検討←節電対策)
→1ヶ月に1週間、病院近くで泊まり込む医師。残り3週間は、自宅で研究&家事育児。
→telecommuting:在宅勤務
→parental leave:育児休業
背景に"交渉"の文化
バラ色でないアメリカ
→有給の産休・育休なし
個別交渉で勝ち取る。能力のある人には良いが、そうでない人にはつらい。
米国の動向はなぜ?
→女性の経済力の向上&男性の経済力の低下。
→夫婦間でも交渉。
→男性にも選択肢はある(主夫になる選択、仕事のペースを落とす選択)。
日本の家事育児分担。
→妻が働いていても夫は家事をしない。
→正社員夫婦でも家事はほぼすべて妻。
多くの男性は家事育児責任を負わずに仕事に没頭している。
→そんな中、妻に対してフェアに行動しようとする男性はキャリア競争に勝つのがより大変になる。
女性の社会進出を応援する、配偶者が働くことも良いと思う男性は少なくない。
→そう思うことと、そのために実際の行動をすることは全然違う。
→フィギュアスケートを見て、それとわかることと実際に滑ることの違い。
こうした状況の中、当事者に何ができるか?
→働く環境を選ぶ(業界、職種、国、地域)
→制度だけを見ない(上司によって違う)
→配偶者とよく話し合う
→必要に応じて変える、捨てる、時にあきらめる
→長い目で見る
満足度の高い夫婦
「振り返ると公平だった」
周囲は何ができるか?
→"女性だから配慮する"は×。毎日の深夜労働は男性だって大変。一方、女性への過度な配慮は成長機会を奪う。
→子供を持つ女性に対して。本音を話せる関係を築く。ハードに働きたい人も、セーブしたい人も、人によって考えていること、求めていることは違う。
→男女ともに、"配慮"よりも公平な処遇を。どういうパフォーマンスを出しているかが大切。成果が減ったら待遇も落とす。成果が出ているのならきちんと評価。
→男性にもWLBが必要という意識。
育児だけではなく、介護に携わる男性が増えている。
自分の病気、配偶者の病気、誰もが仕事以外の「何か」を抱える可能性はある。お互いさま意識も必要。
WLB推進は弱者保護ではなく、人材戦略。
米国では、博士号保持者に週休2.5日をオファーの例も。
「グローバル競争に勝つ」&「WLB のとれた職場」の両立を目指そう。
***
治部さんのご講演の後は、共働き子育て中の黒田真也教授がパネリストとしてご登壇くださり、パネルディスカッションを行いました。
黒田先生の自己紹介から。
医学部出身、専門はシステム生物学。
配偶者は元精神科医で、現在はマウスを使って子育ての神経科学を研究。
カナダモントリオールで第一子産まれる。小学生の長男、生後7か月の次男。
同じ北米でも米国とは違い手厚い。
共働き両親のもとで育ち、家事育児に自身も携わるのは当たり前という感覚。
主に汚れもの担当。長男、カブトムシ、ザリガニ担当。
裁量労働制のおかげで子供の病気の対応はしやすい。
学会などの予定は自分の一存では決められない(家族と相談)。
治部さんのご講演や黒田先生の自己紹介を受けて、フロアの参加者からもたくさんの質問や意見が出され、ディスカッションは大変盛り上がりました。
私は司会をしていましたので、残念ながらメモはないのですが、記憶をたどって…
「男性の家庭参加や意識の、世代ごと、年収ごとの差などは?」
→具体的なデータはわからないが、違いはありそう。
「子育て中の上司が部下に負担を強いることは?」
→気をつけなければいけない問題。独身者、子供がいない人などに不公平を強いてはいけない。
「能力がある人はWLBを勝ち取れても、能力のない人は?」
→重要な指摘。問題をわけて考える必要がある。人材戦略でいける層と、そうではない層がいる。
「家庭に参加したいと思っている男性は、どこまで具体的に、何をしたいと思っているのか?」
→個人によるが、実際のところ、あれやりたい、これやりたい、というよりも、気が付いたらやっている、やらざるを得ない。
「自分の職場はWLBの視点が全然ないのだが、どうしていったらよいか?」
→原因を考える。良くなる可能性があるのか、ないのか。ないのならば転職も。
「キャリア形成期と出産育児期の兼ね合いは?」
→仕事で実績を築いてからの方が、子育てと仕事の両立はしやすいという側面も。
→女性研究者の場合は昔から、学生のうちかPIになってからと言われる。
「不況の中、WLBなんて言っている余裕はないのでは?」
→しかしきちんと処遇しないと優秀な人材が逃げてしまう。
→米国では悪平等ではなく、必要な人材へ投資をする。
→昔は評価は女性の方が良くても、女性は辞めるし男性を育てればよいからと男性をとっていたが、育てる余裕がなくなって女性の採用が増えてきたという側面も。
ざっくりと書いてしまいましたが、それぞれのトピックに関して、お二人のお答は具体的で興味深く、話題は豊かに広がりました。
黒田先生が最後に、資本主義経済の中で出産育児は消費と捕らえられるが、それでは少子化が進むのは当たり前、しかし生物学的には子育ては生産である。そこを根本から考える必要がある、ということを仰っていて、印象的でした。
講演会の後にはフリートークの時間を設けてあったのですが、治部さんの前には長い列ができるとともに、参加者同士の輪もあちこちにでき、それぞれが日頃考えていることや、講演を聴いたり議論に参加しての意見などをお話しされていました。
男女共同参画(←実はこの言葉、あんまり好きじゃないです)、というよりも、あらゆる人にとって能力を生かし働きやすい環境を整えることが本質的には大切なことで、そのためには、女性に配慮優遇することが重要なのではなく、男性も含めて皆が働きやすい環境を考えることが大切。そういう意識に端を発した講演会だったのですが、これまでは共同参画イベントは主に女性向けのものが多く、男性の参加はほとんどありませんでしたので、どうなることかと不安もありました。でも蓋を開けてみると、男性も含めて多くの方がご参加くださり、活発に議論を交わしてくださったことをとてもうれしく思いました。これもひとえに治部さんの魅力のなせる技だと思います。
ところで、この女性向け、というのを指して、男子禁制の雰囲気がある、と仰った方がいたのですが、まさにそうであったのだと思います。でも、そんなの全然共同参画じゃないですよね。
共に歩む未来のために、まずは今を一緒に歩いていけたらな、と思います。
治部さんのご著書はこちら。